コラム > 2017年4月

「女性に優しいものは男性にも優しい? ダイバーシティを考える」

(2017年4月28日)

当社では、事業開発に向けた産業・技術調査やコンサルティングのほかに、事業段階に応じて広報・マーケティング支援を行っている。さらに市場反応、引き合いに対する営業支援、マッチングまで行うケースもある。

広報・マーケティング支援ではこれまで技術広報や機能性研究に関するものが多かったが、最近、大手インフラ関連企業の企業広報に関わるプロジェクトがあった。

テーマは「ダイバーシティ」。主な目的は、社会に対する企業イメージの向上であったが、イノベーション、新規事業創出の観点から改めてダイバーシティ推進の幅と重要性を感じる機会となった。

社会ニーズの多様化やグローバル化、人手不足に対する生産性向上といった様々な外部環境への対応として、ダイバーシティ経営の推進は企業において必然的な流れとなっている。安倍政権の成長戦略の柱でもあり、各社とも意識改革、業務プロセスの改善に取り組んでいる。

女性の活躍はその試金石であり、女性視点で開発したヒット商品などをPRする企業を目にすることもあるが、もちろんこれはダイバーシティのプロセス、成果の一面に過ぎない。

今回、ダイバーシティ広報支援を通じ、顧客企業やメディア関係者との意見交換で「なるほど」と小さく感心したことの一つ。それは、女性利用に配慮されて開発した商品が、実は男性にも利便性が高いケースが意外にあるということだ。

分かりやすい話では、建設現場で働く女性作業員向けに軽量化などの工夫を凝らした安全帯が、腰痛持ちの男性作業員にもメリットがあり好評であったという事例などがある。
おそらくこうした事例は様々な業界にたくさん眠っているのだろう。

ただ、企業の人事・ダイバーシティ関係者の話によると、こういった話は商品開発の現場だけではなく社内の人材育成においても同様で、女性社員向けに設けたキャリア支援制度が男性社員に対してもメリットがあるケースも多いという。

また、男女間での価値転換のみならず、同じような発想で、視覚障がい者向けに開発した屋内外音声ナビゲーションシステムを、外国人向けのサービスに応用しようと検討中の企業もある。

経済産業省はこの3月に、「ダイバーシティ2.0」として新たな行動ガイドラインの概要を公表し、産業界に対して全社的かつ継続的な取り組みを促した。

数値目標を掲げ、個々の人材の能力を最大限に引き出しながら働き方改革を推進することは重要だ。しかし同時に、具体的なイノベーション、新規事業創出に向けて、ダイバーシティを広く解釈し、商品開発の現場における柔軟な発想転換を行うことが、企業の成長にとって重要と思われる。

今回のダイバーシティ広報支援を通じ、こうした発想の転換など、目に見えにくい部分のダイバーシティ推進の「価値」に気付いていない経営陣がまだ多いという話を聞いた。
皆さんの職場はどうだろうか。もし、経営陣の動きが“鈍い”場合、役職者の方を中心にチーム単位でも、「ダイバーシティ2.0」の趣旨を広く前向きに解釈して取り組んでもらいたいと思う。

池田英一郎(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

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