コラム > 2017年6月

「クルマの未来は『MIRAI』か?」

(2017年6月30日)

来る水素社会を象徴する先兵として開発された「MIRAI」。
その行く先に暗雲が立ち込め始めた。

MIRAIは、トヨタ自動車が開発し、2014年販売を開始した燃料電池車である。
水素と酸素を反応させて電気を取り出す。
生成物は水だけだ。CO2を排出しない。
地球環境にやさしい究極のエコカーとして開発された。

ところがここに来て、
EV、特にそれに搭載されるLiイオン電池の技術進化が急速で、
燃料電池車の未来が怪しくなってきた。

大手自動車メーカーは将来のエコカーとしてEVだけでなく
燃料電池車の開発に力を入れてきた。
トヨタ自動車以外にも、
ダイムラー、GM、ホンダといった主要自動車メーカーが開発を進めている。

既存のLiイオン電池は、燃料電池に比べてエネルギー密度が低く、
1回の充電による走行距離は230km程度(電池容量30kWh)である。
一方、MIRAIは1回の充填で約700kmの走行が可能だ。
これまで、この差を埋めるLiイオン電池の開発に時間がかかるとみられていた。

ところが次世代Liイオン電池の開発が急速に進み、
1回の充電で500km程度走行できるEVの実用化が視野に入った。

その代表格が全固体電池である。

昨年、東京工業大学とトヨタ自動車の共同研究グループ、Boschの全固体電池開発子会社Seeoなどが、実用化最大のボトルネックとなっていた固体電解質のLiイオン伝導度の問題を解決する材料を発見した。

その一方、国が推進してきた燃料電池車の普及計画は後退している。

2010年に作成された「NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ2010」では、燃料電池車の普及目標は、2025年までに累積販売台数が200万台、水素ステーション数が1000個所だった。

2016年に策定された水素・燃料電池戦略協議会の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の中では、2025年の累積販売台数が20万台、水素ステーション数が320個所とかなり後退した。

こうした状況を反映し、HEV、PHVから燃料電池車への移行を目指してきたトヨタ自動車も2016年12月にEV開発の社内ベンチャーを発足させた。

また、すでに40万台の予約があり、今年末販売予定の低価格EV、テスラ「Model3」が登場すれば、こうしたEV化の流れはさらに加速されるだろう。

「MIRAI」の未来、すなわち燃料電池車の未来は視界不良になりつつある。

宮崎信行(株式会社テクノアソシエーツ シニア・アドバイザー)

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