コラム > 2017年7月

「電動航空機とエアータクシー」

(2017年7月31日)

現在の航空機はジェットエンジンやレシプロエンジンが動力源だが、バッテリーと電気モーターを動力とする電動航空機の開発も進んでいる。電動航空機では、燃費や整備費の大幅な削減が期待できることが魅力だが、実現の際は先ずは小型機からとなるだろう。

電動航空機となると、相当先のようなイメージに感じるが、実はすでに飛んでいる。

供給しているのは、世界に先駆け販売された唯一の電動航空機メーカーPIPISTREL社(スロベニア)。同社は既に電池駆動による2人乗り小型飛行機を発売している。

本当かと疑ってみたくなるが、実は小型航空機のピストンエンジンは、軽自動車のエンジンと同じサイズ。したがって、飛行機愛好家は車のエンジンを外し、自ら積み込んで飛んでいる人も結構いるのだ。さらに、ガソリン車以上にパワフルに街を走行しているEVを想像してみれば、何となく理解できるだろう。

この電動飛行機は商業化され、購入することもできる。1時間程の飛行が可能。本体価格は10.5万ユーロ。エアバス社も同様な航空機の量産化を計画している。

飛行機を電動化にする意味だが、小型機は特に運航コストが高い。初期投資はそれ程でもなく、トータルではランニング費用の1割程度で収まる。つまり、「整備費」「燃料費」が問題なのだ。

例えば電動化で2〜3千万円の機体を購入しても、通常エンジン機だと「整備・燃料費」が500万円もしてしまう。一方、電動機の場合は100万円程度になる。結果、小型プロペラ機を電動化した場合、運行コストはトータルで40%近く削減できる。構造が簡単なため整備が容易で一定時間ごとのオーバーホールが不要となる。

参考だが、エンジンとは違い電動モーターはデジタル技術との親和性も高いため、電機/素材メーカーなどの異業種も参入し易い点もある。

このコスト削減が実現すると何が起きるのか?

その答えの一つとしてエアータクシーという事業がある。数人乗り電動飛行機が実現し、法や認可を除けばエアータクシーの事業化が実質的に可能となる。

現在、社長交代劇などで何かとお騒がせしている米国ベンチャーのウーバー社が、このPIPISTREL社をパートナーにしてVTOL型(滑走路不要な航空機、原理は米軍オスプレーと同じ)の電動航空機を2020年までに開発し、世界の主要都市でエアータクシー事業を展開する計画である。

飛行時に何の障害物もなく、ヘリコプターのように決められた駐機場に着陸することは、「対向車や急な飛び込み」、「道路状況が常に変化するような自動車」の自動運転と比べても、有人・無人を問わず電気自動航空機の方が技術的な課題は少ないように感じる。

彼らが2020年に実現するかどうかは別として、将来このような世界が実現することにもそれなりに根拠があり、水面下ではそこに向かって開発に取り組んでいる人々がいる。

エアータクシーに向けた取り組みは着実に進んでいるようだ。

木村勲(株式会社テクノアソシエーツ プリンシパル)

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