コラム > 2018年8月

「すぐそこにある宇宙エンターテインメント、民間ライドシェアが実現を支援」

(2018年8月31日)

宇宙事業というと、かなり遠くにあるようにみえるが、想像する以上にすぐ手が届くところにある。具体的な事例を一つ挙げよう。

“特殊な素材の粒を軌道上の人工衛星から宇宙空間に放出して、大気圏に突入させることで流れ星を人工的に再現することを目指す”宇宙ベンチャーのALE(エール、東京都港区)は、2020年までに広島県の瀬戸内海上空で人工流れ星を演出するという宇宙エンターテインメントを計画している。初号機は宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケットで打ち上げるが、2号機以降はロケット打ち上げ費用が格段に安くなるとされる民間商用ロケットを活用する予定。

数年後には宇宙エンターテインメントは定番のアトラクションになっている可能性もある。逆に言えば、技術的な課題が満載の深い宇宙(Deep Space)になると専門家以外の一般の人の興味を引きつけることが難しく、民間のビジネスが成立するにはまだ時間がかかる。

一年前に取材した宇宙飛行士は、「宇宙飛行士や宇宙科学技術者は、より深い宇宙への探検に心を躍らせる。しかし地球が見えないほどに遠ざかってしまうと、宇宙の景色は真っ暗になる。一般の人に喜ばれるのは、青く美しい地球が感じられる地球近傍までだろう」と語っていた。

<今すぐ申し込みできるサービスも続々>

今すぐ誰でも申込みできる宇宙エンターテインメントサービスを一部紹介する。

(1) 気球で行く「成層圏宇宙旅行」サービス
料金:約1100万円~、実施予定年:2019年
(2) 遺灰などを衛星軌道上へ送る「流れ星」サービス
料金:30万円、実施予定年:2018年
(3) 月へ配送する「月面」サービス
料金:120万円、実施予定年:2019年

(1)は、6人乗りの宇宙船で約2時間のフライトを提供する。従来の打ち上げロケットのような爆音や振動、加速がないため、特に厳しい訓練を受けていない一般の人でも“宇宙に浮かんで見える地球の景色”を楽しめそうだ。トイレも完備しており快適な居住空間が演出されている。また、サービスを提供する米World View Enterprisesが2017年に飛行実験を行った際、ケンタッキー・フライド・チキンが広告スポンサーについた。消費者に身近な会社が、宣伝価値が高いとして商業スポンサーに名乗りを上げたことは、一層宇宙が身近に感じられる出来事だった。

(2)は、は約1cm角のアルミニウム合金製カプセルに遺灰の一部などを入れ、人工衛星軌道上へ運んでくれる。サービス提供会社の米Elysium Spaceによると、専用アプリをスマートフォンなどにダウンロードすれば、カプセルが軌道周回上のどの位置にいるのかをリアルタイムで確認できる。最後は大気圏へ突入し燃え尽きる。

(3)は文字通り月面へ“配送”してくれるサービス。地上では当たり前のサービスが、宇宙ではエンターテインメントに昇華する。

このほかジェフ・ベソス氏も昨年、自身が経営する米Amazonの出荷サービスのような形で月への商用配送サービスを実現したいとの意向を表明している。

<民間商用ロケットとライドシェアが下支え>

こうした宇宙エンターテインメントは、今流行りのライドシェアを活用している。最もコストがかかるロケット打ち上げ費用の削減のためになっている。

米Space Xが開発した大型打ち上げロケット(ファルコン・シリーズ)は、これまでの国家主導の宇宙プロジェクトより格段に費用が安く、相乗りユーザーに多く利用されている。
打ち上げ成功率は96%を誇る(55回中53回成功、2018年5月22日時点)。Space Xの他にも民間会社が名乗りを上げている。小型ロケット打ち上げ開発の米Rocket Labは2018年初頭の打ち上げ実験で、衛星を地球の低軌道(Low-Earth Orbit)へ無事に投入させた2事例目となった。日本でもインターステラテクノロジズが北海道大樹町を拠点に超小型ロケットの打ち上げに挑んでいる。

打ち上げロケットの小型化や技術開発競争が進めば、宇宙エンターテインメントの幅はさらに広がるだろう。

若月真(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

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