コラム > 2018年10月

「米アマゾンがインドで戦っている背後からグーグルが・・・」

(2018年10月30日)

米小売りの名門、シアーズ・ホールディングスが連邦破産法11条(チャプター11)の適応を申請し、経営破綻したことは記憶に新しい。EC(電子商取引)の台頭が既存の小売業を揺るがす「アマゾン・エフェクト」の猛威の一環として、日本でも大きく伝えられた。そのアマゾン(正確にはアマゾン・ドット・コム)は、向かうところ敵なしのように見える。2018年7-9月期は、過去最高益の28億8300万ドル(前年同期比11.3倍!)。同期間の売上も前年同期比29%に伸びた。

そのアマゾンに対抗しようと奮闘を続けている1社が、世界最大の小売りチェーン、ウォルマートであることは良く知られている。アマゾンが2017年7月、米小売り大手のホールフーズ・マーケットを137億ドルで買収したことで、両者の正面衝突が鮮明化した。ウォルマートは2017年12月、正式名称の「ウォルマート・ストアーズ」から「ストアーズ」をなぐり捨て、社名をウォルマートに変更。リアルでなくネットの世界に軸足を移すことを内外に示している。今のところ、アマゾンは2018年1月に初の無人コンビニ「amazon go」を展開したりするなど、話題性を含めて有利に駒を進めているように映る。一方のウォルマートも、物流大改革の実践や、amazon goと同様の無人店舗の計画が報道されるなど、背中を見せる気配は全くない。

だが、今後世界で最もEC市場の拡大が予測され、注目を集めているインドでは、現時点ではウォルマートがアマゾンをリードしているのだ。そしてインドにおいて、両者の戦いの後ろから姿を見せ始めたのが、あのグーグル。現時点でグーグルとウォルマートは、音声ショッピングで協業するなど非常に近しい関係にあるものの、今後どうなるかは予測が難しい。確実に言えるのは、アマゾンは今後の最有力市場において、複数の非常に強力な企業を相手にせねばならないということだろう。アリババをはじめとする中国企業(アマゾンは中国市場ではアリババ集団に敗れている)も存在感を示しているからややこしい。

インド最大のEC事業者を傘下に収めた“ウォルマート連合”の1社はアルファベット

現在のインドのEC市場のプレイヤーとシェアは、首位がFlipkart(フリップカート、39%)、2位がアマゾン(32%)。以下、中国アリババが出資しているスナップディールなどが10%台で続く。その首位のフリップカートを2018年6月、160億ドルもの巨費で買収(株式の75%取得)したのが“ウォルマート連合”。連合としたのは、ウォルマートがリードする企業群だからであり、その1社がグーグルの親会社、アルファベットなのだ(ちなみに日本のソフトバンクは2017年にフリップカートに出資。わずか8カ月で出資金の25億ドルが40億ドルに大化けした)。アマゾンもすかさず手を打った。同社は9月、インドの小売大手アディティア・ビルラ・リテールを有する同国のプライベートエクイティ(PE)と手を組んだ。まさにリアル(実店舗)でもネットでも、絶対後に引かない構えだ。グーグルは何をしているか。時系列で見ると分かりやすい。

・2017年1月 インド最大手のオンライン決済サービスPaytm(2010年設立、アリババ集団、ソフトバンクらが出資)でGoogle Playのクレジットチャージを可能に
・2017年9月 インド市場向けのデジタル決済アプリ「Tez(テズ)」をリリース
・2018年8月 「Tezをベースに、グーグルがインドのEC市場に本格参入」と報道される

つまり、ECの基盤である決済プラットフォームを通じて、インド市場に本格的に乗り込むつもりなのだ。

目まぐるしくて申し訳ないが、アマゾンもグーグルが水面下で動いていた2016年2月に、インドのEC決済サービス会社EMVANTAGA Paymentを買収。グーグルがTezをリリースした直後の2018年3月には、同じくインドのモバイル決済サービスを提供するToneTagに出資した。

本丸のEC事業でもリアル事業でも、そして決済等のインフラでも――。
インドでは明日、どんなニュースが飛び出しても不思議ではない超激戦区であることを、少しでも感じていただけただろうか。そして忘れてはならない。グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏は、インド出身のインド系アメリカ人である。インドに他の人物以上に特別な思いを抱いても、不思議ではないだろう。

宮嵜清志(株式会社テクノアソシエーツ 取締役 副社長)

このページの先頭へ