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「超安価でポケットサイズの『Butterfly iQ』がもたらす新しい世界」

(2019年7月31日)

「Butterfly iQ(バタフライ)」という、超安価で一般でも使えるかもしれない超音波スキャナをご存知だろうか。開発した米Butterfly Network社によれば、売り出し価格は2,000米ドル(約21万6千円)。既にFDA(米国食品医薬品局)の認可を取得しており、欧州に製品を輸出する際に必要となるCEマークも今年4月に取得している。

超音波スキャナは一般に、腹部や心臓等の診断ツールとして医療機関で良く使われている。
最も知られたところでは、妊婦の胎児スクリーニングだろう。妊婦健診のたびに“赤ちゃん”の動く様子を映し出してくれる。産婦人科で医師と受診者(妊婦)がコミュニケーションを図るうえでとても便利なツールである。誰でも視覚的にわかりやすいからだ。

Butterfly iQのポイントは、大掛かりで高額だった医療用の超音波スキャナが、パーソナルユース(一般向け)としても売り出されたところにある。

<ダイエットの必要性を「視覚化(リアル画像)」が後押し>

Butterfly iQは、欧米で医療用機器の高性能な機能の一端を、自宅で誰でも利用できるようにするのが特長とされている。

ヘルスメーターはBMIや体脂肪率などの計算値を教えてくれる便利な健康管理ツールだが、例えばButterfly iQを使ってお腹周りをスキャンして“脂肪がたっぷりとのったギョッとするような”画像を自分で見たりすると、ダイエットの必要性をヒシヒシと感じるに違いない。ダイエットや健康管理でいえば「数値」や「グラフ」ばかりだが、リアル画像を視覚化する(できる)という極めてインパクトが強い世界が迫っているかのようだ。

<Butterfly iQが切り拓くか、「自宅でオンライン診察」の世界>

ここでさらにイメージを膨らませてみる。現在の最先端IoT技術やクラウドを活用すれば、以下のようなことが可能になるのではないか(あくまでもイメージであり、必要となる法整備が整ったことを前提に話を進める)。

《イメージ》

@ Butterfly iQを使って、本人が自宅で(例えば)肝臓をスキャン
A スキャンされたデータがクラウドに自動アップロード
B AIが瞬時に“初期診察”する(世界中の症例データと比較して最適解を導き出す)
C “オンライン”医師(有資格者)が最終診察&処方
D Amazonプライムで即時に薬が自宅に届く(後々ドローン配送になるかも)

BのAI(人工知能)による“初期診察”で重病の可能性が高い確率で示された場合には、対象となる治療や手術が最適と判断される病院を紹介してくれる、救急車もオンラインで連携され自動で手配・呼び出ししてくれる・・・といったような新しい世界感がどんどん広がる可能性を秘めている。

<病気の予防、診察、医療の概念を変えるかもしれない、その第一歩>

Butterfly iQに限らず、こうした手軽に持ち運びできる小型デバイスは、病気の予防、診察、医療の在り方を大きく変える第一歩となるかもしれない。病気や気になる個所があったら、まず自宅の小型デバイスを使って“AIにオンライン初期診察”してもらう。

もしこうした手法が実現したのなら、妊婦さんや乳幼児のいる親御さん、足腰が悪く移動に苦労されている方々等には特に重宝されることだろう。“病院の待合室で長いこと順番待ち”から解放される日がやってくるかもしれない・・・日本のみならず世界中の膨らみ続ける医療費抑制に大貢献するツールになる・・・とまで言ったら言い過ぎだろうか。

<米Apple社のヘルスケア戦略の向こう側>

もう一つ気になる動きがある。実はこの製品、iPhone/iPadと接続し、超音波画像を映し出して使うのだが、今年6月に米Apple社がその連携アプリ(無料)に対しApple Design Awards賞を与えているのだ。

AppleはApple Watch(アップル ウォッチ)を先兵としたウェアラブル端末を介して人々の健康データを取り込む巨大なプラットフォームを作り上げようとしているのは周知の事実。そして、そこで使われるデータがアップル ウォッチで取得できるものだけでなく、診療にも使われる高精度な医療用データも加わるとしたら・・・

バイタルデータは当然ながら究極の個人情報である。一方、医療機器の低価格化による“民生化”等で取得の敷居はどんどん低くなっていく。Butterfly iQはその先兵といえるかもしれない。とすれば、我々は利便性を享受するだけでなく、その取扱いがどうなるのか、しっかりウォッチしていく必要にも迫られるだろう。

若月真(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

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