コラム > 2019年9月

「SDGs導入、ボードゲームで手軽に実践〜開発部門でも有効活用」
SDGsは企業の知財戦略も変えるか

(2019年9月30日)

先日、“SDGsボードゲーム”にテスト参加する機会があった。開発したのは、一般社団法人未来技術推進協会(東京都港区)。同協会は、若手技術者を中心とした団体で、テクノロジーで社会課題解決型の事業を創出するようなエコシステムの構築を目指しており、その一環でアクティブラーニングをベースとした企業向けのSDGs研修をワークショップやイベント形式で実施している。

「SDGsと個人をつなぎ、日々の行動へのヒントを得てもらいたい」(草場壽一代表理事)。そこで昨年、SDGsに対する視点を楽しみながら習得できるツールとして、独自のボードゲームを開発した。利用した企業や学校からも好評を得ており、今年5月の国連主催「SDG Global Festival of Action 2019」でも高い評価を得たという。当協会のワークショップは、SDGsに関する基礎知識のインプット、ボードゲームを通じたSDGsの体験、アイデアソンによる思考力鍛錬、具体的な課題設定による実行を、側面支援する内容となっている。

ゲームの内容を簡単に説明するとこうだ。4名(最大8名)のプレーヤーは、大企業、中小・ベンチャー、大学・研究機関、慈善団体の立場に分かれて参加する。国連が2030年に向けて掲げた17のグローバル目標が10段階のパラメーターで設定されており、プレーヤーはそれぞれの立ち位置、趣向で投資、協業を繰り返しながら、17の目標の全体的な向上と、プレーヤーの所属団体のランク向上を目指すというもの。プレーヤーは順番にサイコロを振って、ボード上の駒を進めてミッションカードを引く。ミッションカードの種類は経済、社会、環境テーマに分かれており、様々な国内事例をもとに作成されている。そこには具体的な課題内容と解決策、および関連する目標のアイコンが記載されており、プレーヤーはお財布事情と課題内容、課題解決で獲得できる点数、実行に必要な諸条件を見ながら投資判断を行う。協業の要素を取り入れているのも特徴の一つだ。ミッションカードも企業ごとにカスタマイズが可能であり、拡張性も期待できる。

自社の持続的な経済成長と社会課題解決を両立させるために――。自社が、製品・サービスの購入者(消費者、取引先)、株主、投資家、地域社会、人材(新卒学生など)などといった主要なステークホルダーから選ばれ続けるために――。今、SDGsへの取り組みが重要なのは間違いない。先進企業では、経営主導でミッションやビジョンとは別に、パーパスと呼ばれる自社の存在意義を新たに掲げて全社的に取り組む。経営企画部門、人事部門、CSR部門、マーケティング部門の中に専門部署、機能を設置する企業もある。全社的な実行には経営トップのコミットメントは重要。しかしながら、こうしたパーパスを有機的なものとするためにも、個人、従業員ひとりひとりが意識を持ち、恥ずかしがることなく語れることが必要である。「SDGsは個人の取り組み、自分ごとの意識が重要」(草場代表理事)。

米国、中国企業に対して日本の技術競争力の優劣について議論される中、企業の技術人材にとって、社会的な視点、問題発見能力を持って研究開発テーマと社会的価値と対話することも重要であろう。自ずと視点も社会に向けられることで、イノベーションやスタートアップへと誘発されるかもしれない。マーケティング機能が強くないBtoB企業であれば、SDGsの専門部署を研究開発部門に設置するのも一案。チーム内で前述のボードゲームやワークショップを実施してみるのも良い。未来技術推進協会では、今夏からボードゲームのレンタルも開始している。購入も可能ということだ。

そういえば15年ほど前、現職で知的財産の検定事業の草創期に関わったことがあった。知財人材の裾野拡大と専門人材の育成を目的としていたが、真のターゲットは技術者。その目的は、事業競争力強化を見据えた研究開発活動の活性化にあったことを思い出す。あれから10年、15年経って果たしてどうなったか。SDGsへの取り組みは、企業の知財戦略に対する考え方も変えるのかもしれない。

池田英一郎(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

■一般社団法人未来技術推進協会
 https://future-tech-association.org/

■「世界とつながれる!社会課題を楽しく学べるSDGsボードゲーム」
   購入も可能、クラウドファンディングCAMPFIREに出展中(2019年11月10日まで)
 https://camp-fire.jp/projects/view/191601

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